「キャバノー・スキャンダル」に揺れる米

「キャバノー・スキャンダル」に揺れる米

米国の場合は最高裁判事の任命をめぐる真偽論争の渦中にある。その中心にいるのはワシントンDC連邦の控訴裁判所判事であるブレット・キャバノー氏だ。7月末で辞任したアンソニー・ケネディ前最高裁判事の後任としてトランプ大統領が指名した保守性向の判事である。現在の革新4、保守4という最高裁の理念を確実な保守優位に近づけるため、トランプ大統領が選択したカードである。53歳と最高裁の判事候補としてはかなり若手の部類に入る彼が登用されれば、今後20~30年は保守陣営に有利な判決が下されるのではとの見方が優勢だ。

一見すると完璧なスペックの持ち主であるキャバノー氏が上院の承認を難なく通過し、連邦最高裁判事の栄冠を手に入れるものだと誰もが信じて疑わなかった。彼の保守性向を危惧した民主党は必死に反対をしたが、最高裁判事は単純に過半数承認による任命であることから、キャバノー氏の就任は既に既成事実として受け取られていた。上院は現在51対49で、共和党が多数を占めている。

この勢いに乗って突っ走ると見られていたキャバノー判事だが、約30年前に起こったある事件が突如明らかとなり(本人は否定)、ここへ来て最大の危機に直面している。パロアルト大学のクリスティーン・ブラジー・フォード教授が15歳だった1982年夏、当時17歳の高校生だったキャバノー氏から性的暴行未遂を受けたと告発し状況は一変。

フォード教授の主張を裏付ける証拠や証言は今のところまだ無いが、告発の内容が非常に具体的であり、またMe Too運動の影響も手伝って大きな波紋を呼んだ。さらにキャバノー氏がエール大学に在学していた時代の性スキャンダルを告発する別の女性も現れた。

先月27日の上院司法委員会では、記者らも固唾を飲んで双方の証言を見守った。大方の一般人は委縮してしまうような聴聞会場でフォード氏は、30年余りも前の出来事について落ち着いて冷静に証言した。聴聞会の前から感じていたことだが、フォード教授が嘘の証言をしているとは思えなかった。きちんとした家庭があり社会的な地位も確立している大学教授が、自ら進んで好奇の目にさらされようなどという理由が浮かばない。一方のキャバノー氏も当然、性的暴行の疑いを完全否定し身の潔白を訴えた。

聴聞会後に実施された各世論調査では、キャバノー判事よりフォード教授の言葉を信用するという人の方が多かった。上院がキャバノー氏の承認を拒否するか、或いはトランプ大統領が彼への指名を撤回するべきだとの声が高まっている。しかし問題はそう簡単ではない。1982年に発生したとされる事件の真実を立証する十分な証拠もなしに、ただ心証のみで能力ある裁判官の未来を閉ざすことがあってはならないという反論の声もある。

上院は現地時間4日にキャバノー氏の容疑を調査したFBIのレポート検収を行い、早ければ6日にも承認投票を実施するという。ホワイトハウスは、彼の疑いを立証する内容は見つからなかったとの声明を出した。当初の予想通り、心証はあるが物証がなさそうだ。共和党の女性議員や穏健派議員らがキャバノー氏承認に反対票を投じる可能性は否定できない。キャバノー氏の疑いを立証する確固たる証拠が出てこない限り、最高裁を共和党に有利な構成にするため、共和党議員全員がキャバノー氏を支援するという見方もある。結果がどうであれ後遺症は避けられない。

公正性と信頼の元に成り立つ最高裁の構成が、政治や陣営論理の延長線上に決定されたという非難は免れないためだ。ウォールストリートジャーナルは「今回の騒動で米国の世論が二分され、最高裁の政治的両極化がさらに深刻化するのでは」と懸念を示した。信頼の象徴ともいえる最高裁判所が、米国国民の目に政治的集団として映ってしまったことは非常に残念だ。

(編集者コメント:同記事を書いた時点は10月5日。キャバノー判事は10月8日に連邦最高裁判事に就任した)

翻訳者:M.I

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