カナダの実験「大麻合法化」…成功するか?

カナダの実験「大麻合法化」…成功するか?
10年ほど前のある真っ暗な夜、カナダ・カルガリーのバス停留所に立っていると、ひとりのホームレスが静かに近づいて来てそっと言葉を口にした。「ウィード(大麻)いるかい?」「いいえ!」との言葉を投げつけて、タイミング良く到着したバスに逃げるように乗り込んだ。バスの座席の間に挟まっていた、黄色く縮んだ一本の大麻草が目についた。
カナダでは先週、嗜好品としての大麻の取引が全面合法化された。これはカナダの歴史上95年ぶりの事。世界的には昨年のウルグアイに続いて2番目となり、G7の主要7ヶ国の中では初となる。カナダでは医療用大麻は既に2001年に合法化されている。
あの日、バスの停留所で出くわしたホームレスのように、こそこそとやって来て大麻取引を持ちかける光景は、今後のカナダでは見られなくなる。大麻販売店に行けば、いつでも自由に大麻を購入する事が出来、自宅で直接大麻草を栽培する事も可能となったためだ。
この日からカナダ全域で、少なくとも11店の嗜好用大麻販売店が営業を開始した。当面の間は乾燥させた葉、種、カプセル、溶液などの形で販売されるものの、来年には大麻成分が含まれる食品や濃縮液の販売も始まるとみられる。
カナダの大麻合法化に最も大きな役割を果たしたのはジャスティン・トルドー首相だ。大麻合法化を連邦選挙公約として打ち立ててから3年となる。カナダのマスコミでは今回の大麻合法化を、「ジャスティンの勝利」と呼んでいる。カナダは2001年から医療用大麻を合法化したものの、嗜好品としての大麻合法化を巡っては産みの苦しみを味合わっていた。そのような中、トルドー首相就任後に関連論議は急速に進み始めた。
トルドー首相の全面的な支援の元、カナダ議会内に「大麻草合法化及び規制に関するタスクフォース」が設けられ、昨年4月に「大麻草法案」が議会に提出された。この法案は今年6月に議会を通過し、今月17日に発効した。トルドー首相は2014年、カナダ自由党の党指導部選挙で初めて大麻合法化を約束し、2015年の連邦選挙では、大麻を禁止して不法な取引を増加させる代わりに、規制と税金を掛けて良性化させようと主張していた。
トルドー首相は、過去5〜6回大麻を使用した経験があり、そのうちの一回は議員時代だったと告白している。しかし、「決して大麻を楽しんだことはない」と述べた。大麻合法化が始まった17日にも「大麻を使用する気は全くない」と、「カフェインが含まれているコーヒーも飲んでいない」と強調した。
こんなトルドー首相が大麻合法化を推し進めた理由は、カナダの大麻禁止政策が失敗したという判断からだ。もう根絶できない水準であれば良性化して政府の管理下に置こうという狙いだ。トルドー首相は大麻禁止政策が結果的に大麻から子供を守れず、毎年数百万ドルを犯罪集団に投げ出していると批判してきた。
カナダの国家統計局によると、昨年大麻の使用経験がある国民は490万人だ。国民1人当たり20グラムの大麻を1年間消費したことになる。ガン患者を含めて約33万人が、関連する資格があるメーカーに登録して大麻をもらっている。カナダの保健当局は、大麻合法化について「消費者が合法市場に移っていくと信じている」と述べた。
しかし、懸念の視線も少なくない。大麻を合法化しても販売の規制や供給不足などで、闇市場が依然として存在し続け、大麻の消費をむしろ煽るという指摘だ。カナダは今回の大麻合法化で、18歳以上であれば誰でも大麻を栽培・所持・消費できるようにしながらも、個人所持量は30グラム、栽培は4本以下に制限した。また、大量生産と販売は、別途のライセンスを当局から受けなければならない。
カナダは、中央政府が大麻産業を安定的に規制・管理できるかどうかを確認する実験場になった。成功するかどうかに全世界が注目している。
翻訳:水野卓