【FNコラム】 保護貿易の行く末

【FNコラム】 保護貿易の行く末
近年、世界経済には保護貿易が染みついている。世界的な金融危機後の不況が長期化し、各国が自国の産業を守るため、保護貿易的な措置を徐々に導入してきたのだ。しかし最近では世界経済の状態が回復しているにも関わらず、昨年はじめに就任した米国のトランプ大統領は、保護貿易の範疇を超え貿易戦争を開始しようとしている。
最大の貿易赤字国である中国の輸出品について、米国は高い輸入関税を課している。それだけでなく、韓国、欧州連合(EU)、日本、カナダ、メキシコなど元来の友好国に対しても、セーフガード、関税そして非関税障壁などの措置を強めている。これに負けじと中国やEU諸国が、米国に対し相応の報復措置を断行しているのだ。
しかしながら、日増しに酷くなる保護貿易と貿易戦争はどこまで続くのだろうか。米国、中国、EUが始めた保護貿易措置の弊害を、各国の経済界はまだ気づいていない。だが遠からず、引き上げられた関税の影響で生活必需品の価格は軒並み上昇し、各国を代表する輸出企業らは不利な交易条件に苦しめられ、経済界はそれに持ち堪えられないだろう。そうなれば、政策執行者の立場から見た保護貿易は決して有益な政策手段とは言えない。そのため現在の貿易戦争へと発展しつつある保護貿易は、経済界の反発により予想よりも早く収束する可能性が高い。最近のトランプ大統領とユンケル議長によるホワイトハウス会合や、水面下での継続的な米中間対話は、そのような側面を示唆している。
もしかすると我々が本当に考えなければならないのは、積極的な動きがほぼ不可能な貿易戦争の時期ではなく、保護貿易が終結を迎える時期についてなのかもしれない。対外経済政策研究院の2018年世界経済展望によると、米国と日本は近年最高の好況と低い失業率を誇っており、EU諸国も概ね景気回復傾向にあるという。米国は年末までに最小基準金利を0.5%ポイントほど引き上げる予定だ。欧州中央銀行と日本は依然として緩和基調を維持するとしているが、金利下落を凍結させ量的緩和は減らしている。即ち、経済先進国はここ10年余り続いた厳しい時代を終え、世界経済の主導権を回復しつつあるのだ。
ところが最近、政府の通商政策の関心は、回復中にある先進経済圏よりもシンブクバン・シンナンバン政策の対象、振興経済圏にある。シンブクバン・シンナンバン政策は、貿易関係を多元化し新しい海外市場を開拓するために、非常に望ましく時宜にかなった政策であることに間違いない。しかしこの政策が韓国経済に実質的効果をもたらすためには相当な時間が必要である。そしてその中心にいる経済振興国は依然として、政策リスクの高さや資源依存型経済といった面から安定性に欠ける。したがって保護貿易が終わった後で、安定性のある経済先進国の好況に与る策についても考えなくてはならない。
一つの方法としては、保護貿易によりその価値が低く評価されているアジア太平洋経済協力(APEC)、主要20カ国(G20)、世界貿易機関(WTO)のような国際組織を通して、経済先進国が納得できるような方向で韓国の役割を拡大させることだ。近年、経済難に見舞われている国際組織に対し韓国政府が拠出金を増やし、その組織で加盟国の同意を得ながら、韓国の利益を保証するなど新しい協力体制を生み出すこともできる。
また他の方法としては、経済先進国が含まれるFTAを積極的に活用することだ。
TPPから米国が脱退後、日本を中心に再結成されたCPTPPへの参加を真剣に考慮するか、最近になって妥結が宣言された日本とEUのEPAを多様かつ綿密に分析してみることだ。日本・EU EPAと比較しながら、必要であればEUとのFTA改正交渉も視野に入れる。兎に角、この保護貿易が終焉を迎えた後で新たに生まれてくるチャンスを、韓国が逃さないことを望む。
ソン・ハンギョン教授(ソウル市立大学経済学部)
翻訳者:M.I