「脱エネルギー宣言」のサウジ…海外での原油・ガス開発へ

「脱エネルギー宣言」のサウジ…海外での原油・ガス開発へ
-アラムコの世界的競争力強化へ…「経済改革が順調でない」
エネルギーに対する経済依存脱却を推進して来たサウジアラビアが、これまで国内に限られていた石油・ガスの生産を、今後は海外にまで範囲を広げる計画を発表した。この間推進して来た「脱石油経済政策」が、順調でない事を意味していると考えられる。
サウジアラビアの国有石油企業「アラムコ」の会長兼エネルギー産業鉱物資源相のハリド・アル=ファリハ氏は12日、英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「世界がアラムコの遊び場になるだろう」と話し、海外でもエネルギー生産を始める事を表明した。世界最大の石油生産企業でもあるアラムコは、これまで国内生産にのみ注力していた。
これまでにサウジアラビアが、海外での石油精製・石油化学部門に投資をした事はあるものの、アル=ファリハ大臣は、エネルギー開発から生産事業までを計画していると、「この事は今後アラムコの将来の重要な部分を占めるだろう」と話した。また「アラムコを、海外で石油とガスを生産するロイヤルダッチ・シェルやエクソン・モービルの様な、国際エネルギー市場の担い手に育て上げる」と強調し、石油より近年需要が増しているガスに対してより集中する事を示唆した。
サウジアラビアは、ロシアの液化天然ガス(LNG)開発や、米国のガス輸出資本への投資を検討中である事が、既に知られている。アル=ファリハ大臣は、オーストラリアに対する投資の可能性にも言及している。またサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、サウジアラビアが「危険なレベルの石油中毒になっている」という表現を用いて、改革を経てエネルギー産業への依存度を減らし、伝統経済に対する投資拡大を推進して来た。
しかしアル=ファリハ大臣が、海外にまで石油・ガスの生産範囲を拡大し、引き続きエネルギーへの依存を示唆した事は、新たな分野へ経済を多様化させようとする事が、容易ではない事を意味している。
アル=ファリハ大臣は、経済改革が進んだとしても、これまでサウジアラビア経済の大きな比重を占めて来た石油・ガスは、今後も少なくとも政府収入の40〜50%を占めると見込んでいる。アラムコは過去最大規模になると見られるIPOの計画を発表し、注目を集めている。サウジアラビア政府が約1000億ドル(約11兆1000億円)を調達する事が予想される、アラムコの上場時期についてサルマン皇太子は、昨年10月のブルームバーグ社とのインタビューで、2020年末か2021年の初めになり、規模は2兆ドル程になるだろうと楽観していた。
昨年トルコで発生した、反体制派ジャーナリストのジャマル・カショギ氏死亡事件により、一部海外企業がサウジアラビアへの投資計画を削減したり中止したりしている。日本のソフトバンクのケースでは、サウジアラビア政府と共同で推進して来た、2000億ドル規模の太陽光発電所プロジェクト事業を、妥当性の不足を理由として中止している。
しかしアル=ファリハ大臣は、カショギ氏事件により、外国人がサウジアラビアへの投資を避けているとは考えていないと、今後の展望を楽観視している。
翻訳:水野卓